あな痔(痔瘻)について|豊田クリニック|溝の口・梶が谷

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あな痔(痔瘻)

あな痔(痔瘻)について|豊田クリニック|溝の口・梶が谷

あな痔(痔瘻)とは

痔瘻

あな痔(痔瘻)とは、直腸と肛門周囲の皮膚をつなぐ瘻管(ろうかん)というトンネルができてしまう痔のことです。「あな痔」とも呼ばれ、男性に多くみられます。初期の段階は肛門周囲に膿(うみ)がたまり(肛門周囲膿瘍:こうもんしゅういのうよう)、その膿が自然に出たり、切開によって排膿(はいのう)されたりすると、のちに膿の通り道が残ることがあります。この膿のトンネルやしこりになった組織が痔瘻です。化膿の原因となる細菌が侵入する穴を1次口(原発口)、膿がたまる部分を原発巣、膿が出ていく外側の皮膚開口部を2次口と呼びます。
痔瘻は、痔核(イボ痔)や裂肛(切れ痔)と異なり、薬で治すことはできず、治療には手術が必要となります。手術を行わずに長年放置してしまうと肛門変形の原因になったり、まれにがん化(痔瘻がん)したりすることもあります。痔瘻がんは一般の肛門がんに比べて、悪性度が高いとされていますので、痔瘻と診断されたら速やかに適切な治療を受けることが重要です。

あな痔(痔瘻)の原因

下痢などによって肛門の組織に細菌が入り込み、感染を起こすことが痔瘻の主な原因と考えられています。
肛門と直腸の境界となる部分を歯状線(しじょうせん)といいます。この部分には上向きのポケット状になっている肛門陰窩(こうもんいんか)という小さなくぼみがあり、その中には粘液を出す肛門腺と呼ばれる腺組織があります。直腸では通常、便は固形で小さなくぼみの肛門陰窩から肛門腺に入り込むことはありませんが、下痢をしていると便が入りやすくなり、肛門腺に大腸菌などの細菌が入り込むことがあります。この際、付近に傷があったり、体力や免疫力が低下していたり、糖尿病などの持病によって感染しやすい状態であると、肛門腺が感染を起こして化膿し、肛門周囲膿瘍になることがあります。
肛門周囲膿瘍が進行すると、たまった膿を排出する出口を作るため、肛門の内側と外側をつなぐトンネル(瘻管)ができます。これが痔瘻の発症機序です。
このほか裂肛(切れ痔)や、クローン病、潰瘍性大腸炎といった大腸の病気が原因になることもあります。

肛門周囲膿瘍・あな痔の症状

肛門周囲膿瘍

痔瘻は肛門周囲膿瘍からはじまります。肛門周囲膿瘍は、肛門の周囲が化膿して膿がたまるため、排便に関係なく肛門周囲が腫れてズキズキした激しい痛みが生じます。38~39℃の発熱が続くこともあります。やがて皮膚が破れて、たまった膿が外へ出ると症状は一旦落ち着いて楽になりますが、膿のトンネルができて痔瘻になると、肛門周辺から常に膿が出るようになり、膿の臭いが生じたり、下着が汚れたりといった不快感が伴います。

肛門周囲膿瘍の主な症状

  • 排便に関係なく肛門周囲が腫れてズキズキ痛む
  • 発熱(38~39℃)
  • おしりに熱感がある
  • 痛みでイスに座れない
  • 痛みが少し引いてもトイレットペーパーや下着に膿が付着する
  • 肛門から膿が出る

あな痔

痔瘻

肛門周囲膿瘍では痛みや発熱を伴いますが、痔瘻は通常痛みはなく、しこりを触れたり、分泌物が出たり、かゆみを感じるといったことが主な症状です。しかし膿の出口(2次口)がふさがり、再び膿がたまると肛門周囲膿瘍と同様の症状が現れます。慢性化すると肛門変形を来して、排便困難など肛門の機能障害を起こすこともあります。
痔瘻は、括約筋の間や括約筋を貫通して皮膚に達する単純痔瘻が最も多いタイプですが、膿瘍を繰り返すと腫れるたびに広がり、瘻管がアリの巣のように枝分かれしたり、より深くなったりすることがあります。このタイプを複雑痔瘻といいます。
また、痔瘻は重症度によって以下の4つに分類されており、その状態により手術の方法も変わってきます。

痔瘻の分類

皮下痔瘻(Ⅰ型)

裂肛痔瘻といわれるもので、浅い皮下の痔瘻です。

筋間痔瘻(Ⅱ型)

低位筋間痔瘻(ⅡL型)と高位筋間痔瘻(ⅡH型)があり、低位筋間痔瘻は痔瘻の中で最も多く、括約筋の間を走行して、皮膚に達するタイプです。高位筋間痔瘻は肛門括約筋の間を上方に走行するタイプで、切開排膿だけで治療がすむこともあります。

坐骨直腸窩痔瘻(Ⅲ型)

深く複雑なタイプで、括約筋の奥深くに膿を貯めてしまう痔瘻です。

骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ型)

最も深く複雑なタイプの痔瘻です。

検査・診断

視診、触診、肛門指診

肛門周囲膿瘍は、目で見て腫れや発赤を確認し、指で触って膨らみや痛みの程度を知ることで診断するのが一般的です。痔瘻は肛門周囲にできた2次口を確認し、瘻管の走行を指で確認します。

肛門管超音波検査(肛門エコー)

検査用のプローブという細い棒を肛門に挿入して、肛門周囲の筋肉(内肛門括約筋、外肛門括約筋)の形状を確認します。また、痔瘻の場所を確認したり、肛門の周りに膿の通り道(瘻管)がないかを調べたりすることもできます。

CT、MRI

CT、MRI

トンネル状の検査装置に仰向けの姿勢で入っていただき、身体の輪切り画像を映し出し、骨盤の周りの病変を詳しく調べます。肛門周囲の膿の通り道や骨盤の中の膿のたまり、複雑な痔瘻についてはその広がりなど、様々な情報を得ることができます。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査

細菌が侵入して起こる一般的な痔瘻は、通常の痔瘻手術で治療できますが、問題となるのはクローン病や潰瘍性大腸炎が原因の痔瘻です。これらを見落として通常どおりに痔瘻手術を行うと、傷が治らず余計に悪化してしまうことがあります。手術前にはこうした病気の有無を確認するため大腸内視鏡検査を行います。クローン病がある場合、治療方法を変更する必要があります。潰瘍性大腸炎の場合は、服薬で炎症が治まってから手術を行います。

肛門周囲膿瘍・あな痔の治療

肛門周囲膿瘍で切開排膿を行い、その後、繰り返さずに治癒が見込めるようであれば、それ以上の治療(手術治療)は必要ありません。
しかし、肛門周囲膿瘍を繰り返す場合や膿の排出後、はっきりとした瘻管を形成している痔瘻の場合は、根治手術が必要となります。そのまま放置していると、痔瘻が枝分かれして複雑化したり、肛門変形の原因になったり、まれにがん化(痔瘻がん)することもありますので、注意が必要です。

肛門周囲膿瘍に対する切開排膿術

肛門周囲腫瘍の時期は膿がたまるにつれて痛みがひどくなり、発熱も伴いますが、膿が出てしまえば症状は改善します。そのため肛門周囲膿瘍の治療では、まず皮膚を切開して膿を出す「切開排膿術」が行われます。
肛門周囲の皮膚、あるいは直腸肛門内の粘膜に切開を加え、たまった膿を外に排出し、十分に膿の出口を作った後に、抗生物質や鎮痛剤を投与します。

あな痔の根治手術

膿の排出後、瘻管が残り痔瘻になった場合は、根治手術を行います。瘻管は、肛門の機能を支える括約筋の間を走行したり、括約筋を貫通したりしていることが多く、手術方法は、肛門の機能に問題が起こらないよう括約筋に十分注意して、痔瘻の方向や走行、深さなどに合わせて慎重に選択します。
代表的な手術方法には、「瘻管切開開放術」や「括約筋温存手術」がありますが、「シートン法」による治療や処置も、その安全性と簡便性から広く行われています。
痔瘻(とくに複雑痔瘻)の手術は専門性が高く、高度な技術と経験が必要になりますので、直腸肛門部の外科治療に熟練した医師を受診することが大切です。

瘻管切開開放術
(ろうかんせっかいかいほうじゅつ)

瘻管に沿って入り口(1次口)から出口(2次口)までを切開し、そのまま縫合せずに瘻管を開放する手術です。lay open法とも呼ばれています。根治性が高く、痔瘻の手術で最も再発が少ない術式とされています。括約筋をある程度切り離すため、括約筋を切除しても肛門機能に影響がない肛門の後側にできた単純痔瘻が主な適応となります。

肛門括約筋温存手術
(こうもんかつやくきんおんぞんしゅじゅつ/くり抜き法)

肛門の前側方の痔瘻に対しては、括約筋を切断しない肛門括約筋温存手術を行います。括約筋の損傷を最小限にするために瘻管だけをくり抜く方法で、くり抜いた傷口(1次口)は、手術後に溶ける特殊な糸で縫合します。括約筋の損傷がないため手術後の便失禁といった肛門機能障害は起こらなくなります。術後の肛門機能だけを考えればよい方法ですが、再発率がやや高いことが欠点です。

シートン法

手術時に瘻管を切るのではなく、瘻管に医療用のゴム糸を通して軽く縛り、術後、ゴム糸を締め直していくことで瘻管と肛門括約筋をゆっくり切開する方法です。肛門の後側以外にできた痔瘻や、瘻管が深かったり、複雑だったりする場合に用いられます。シートン法は生体の異物除去反応を利用した治療法で、切開を進めていく間に、最初に切られた括約筋の切口から治癒していきます。切開と治癒が同時に進行するため、括約筋にかかる負担を最小限に抑えることができ、肛門機能の温存効果が高まります。再発も少ない治療法です。ゴム糸は1~2週間の間隔で締め直し、その際は、多少の痛みと違和感があります。治療期間は瘻管の深さや長さによって異なりますが、平均して数ヶ月を要します。