虚血性腸炎（きょけつせいちょうえん）は、大腸への血流障害によって引き起こされる疾患です。大腸の血液供給が不足することで、腸管の組織に酸素や栄養が行き届かず、炎症や壊死が起こることが特徴です。

虚血性腸炎は、主に次の2つの原因によって引き起こされます。

1. 血流の急激な低下: 大腸の血流が急激に低下することで虚血性腸炎が発生する場合、一過性虚血性腸炎と呼ばれます。これは、血栓や塞栓（血管内の血液が詰まること）によって起こることがあります。
2. 持続的な低血流: 大腸の血流が持続的に低下している状態で虚血性腸炎が進行する場合、慢性虚血性腸炎と呼ばれます。この状態は、動脈硬化や狭心症、心不全などの全身的な循環器疾患によって引き起こされることがあります。

虚血性腸炎の症状は、疾患の進行度や影響を受ける範囲によって異なります。一般的な症状には、以下のようなものがあります。

1. 腹痛: 腹部全体や左下腹部にひどい痛みが生じることがあります。痛みは通常、運動や食事後に悪化する傾向があります。
2. 下血: 血便や便中に血液が混じることがあります。血液の量や色は病態の進行度によって異なります。
3. 下痢: 便通が緩くなり、水様性の便が頻繁に生じることがあります。
4. 発熱: 炎症反応により、発熱が生じることがあります。体温が上昇し、全身的な不快感や倦怠感を伴うことがあります。
5. 腹部膨満感: 腹部が膨満感や重苦しさを感じることがあります。
6. 悪心・嘔吐: 食欲不振、吐き気、または嘔吐が現れることがあります。

虚血性腸炎の診断は、症状や身体診察の結果に基づいて行われます。以下の検査が一般的に行われます。

1. 血液検査: 炎症反応や貧血の程度を評価するために血液検査が行われます。
2. 大腸内視鏡検査: 大腸の内視鏡検査により、腸管の状態や血管の異常を確認することができます。
3. 腹部CTスキャン: 腹部CTスキャンは、虚血性腸炎による血液供給障害や腸管の病変を詳しく観察するために行われる場合があります。
4. 組織検査: 組織サンプルを取るために生検が行われることがあります。これにより、病変が虚血性腸炎によるものか他の疾患によるものかを確定することができます。

虚血性腸炎の治療は、症状や病態の進行度によって異なります。治療の目的は、腸管の血流を改善し、炎症や壊死を抑えることです。

1. 保存療法: 軽度の虚血性腸炎では、絶食や輸液などの保存療法が行われることがあります。これにより、腸管の負担を軽減し、回復を促すことがあります。
2. 血行再建手術: 重症の虚血性腸炎では、血液供給を改善するための手術が必要となる場合があります。例えば、閉塞性の血栓や塞栓を取り除くための血管手術が行われることがあります。
3. 腸管切除術: 腸管の一部に壊死や重度の炎症が生じている場合、腸管の切除が必要になることがあります。切除された部分は再建されるか、人工的な腸管（ストーマ）が造設されることがあります。
4. 対症療法: 症状の軽減や合併症の管理のために、鎮痛剤や抗生物質、消化管運動調整薬などが使用されることがあります。

虚血性腸炎の予防方法は明確ではありませんが、いくつかの予防策があります。

1. 健康的な生活習慣: 健康的な食事、適度な運動、禁煙など、心血管疾患や血栓形成を予防するための生活習慣を心掛けましょう。
2. 定期的な健康診断: 定期的な健康診断を受けることで、虚血性腸炎などの病気の早期発見が可能となります。定期的な血液検査や内視鏡検査が推奨されます。

虚血性腸炎は、大腸の血流が低下することで引き起こされる疾患です。症状には腹痛、下血、下痢、発熱などがあります。診断には血液検査、内視鏡検査、CTスキャンなどが行われます。治療方法は保存療法や手術などによって行われます。定期的な健康診断や健康的な生活習慣の維持が予防と早期発見に役立ちます。